2010年5月5日スタート!
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
強歩大会が終わると…
その感想文を所属させていただいている「会」に提出します!
そしてそれが文集となって返ってきます。
万が一!?
いや億が一暇な方がおられましたら…
今回管理人が提出した感想文を貼っておきます。
今回の批評は、「くどい」だったので(涙)
そのままだとは思いますが…(笑)
『 吾輩は靴である 』
吾輩は靴である。名前はまだない。
どこで生まれたのかとんと見当がつかぬ。
何でも薄暗い箱に閉じ込められていたことだけは記憶している。その後明りを手に入れた。その時、吾輩はここで初めて人間というものを見た。後で聞くと、年の頃は四十数歳のおじさんのようだ。
間もなくして、薄暗い箱から出た吾輩にも同志ができた。そもそも、形の異なるもの、また皮膚の張りの違うものまで様々で、特に黒光りした奴などは、無愛想にいつも吾輩を睨みつけていた。そんな中、吾輩と同じ背格好の何人かと話すようになった。特に派手な桃色にペンっとはねたような印(以後桃色)と、黄色に三本の筋が入った(以後黄色)二足とは、形も似ているせいか、打ち解けるのに時間はかからなかった。ちなみに吾輩は、井戸の「井」のような模様のある白斑である。
そこで聞いた、黄色の話が特に印象深かった。どうやら吾輩たちは人間が走ったり、歩いたりするために作られた道具のようで、打ち解けた輩は、どうやら全てそれのようだ。そして、黄色と桃色は過去に一日の半分以上、連続でその作業をさせられた経験があるようだった。しかも黄色の体はボロボロで見てはいられない状態だった。ただ「俺より酷い姿の輩も居たなぁ~」「猫のような絵が描いていたので、猫って呼んでいた爺さんだったが、そいつは二度歩かされたようで、ボロ雑巾のようになってしまっていたなぁ」「いまじゃ~帰らぬ人よ」どうやらその猫なる輩は、始終歩かされた上に、連続作業を二度も経験したそうだ。ただ黄色はこうも言った。「ただ猫は満足そうだったよ」「何かあれば過酷な連続作業を自慢していたし」「そんな俺も体こそボロボロだが、連続作業は唯一無二の自慢話だよ」続けて桃色も「それを言うなら、俺だって昨年の連続作業を自慢させてくれよ」「昨年は、黄色より早い十二時間五十五分だったんだぜ」「いやいや、雪降る中を歩きに歩いた俺の方が凄いぞ」二人の自慢は止まらない。どうやら、連続作業と言う行為は、そうとう誇り高きものらしい。そう感覚的には分かるのだが、体をボロボロにしてまで付き合うことは、吾輩には到底理解できそうもない。
何度か、見晴らしの良い山の頂に連れて行かれた。どうやら、連れていく相手は、主の気分しだいのようで、特に雨の日は黄色が多かった気がする。そこでも幾多の同志に出会うのだが、どうやら我が主はこの山道では有名人なようで、幾度となくすれ違う人に「何往復目ですか?」と質問をされ、その度に主は今の正確な数字を答えていた。そして「えぇっ」と驚かれることを楽しんでいるようだ。内心吾輩も気分が良く、出会う同志につい自慢をしたこともあった。それがまた、体はすり減るのに悪い気がしない。不思議な気分だった。
そんなこんなで、連続作業の当日を迎えた。靴長屋からは吾輩が呼び出され、桃色は少し残念そうな顔で、黄色は「無茶するなよ」って笑顔で送り出してくれた。吾輩は同志に会釈をすると同時に、出番の少ない黒革達を、少し誇らしく見下げていたのは、紛れもない事実だった。
準備を始めた主に呼び出され、外気を吸う吾輩。初めて見る山々の景色に心の高揚を感じずにはいられなかった。そして主と同乗してきた二人の後輩と思しき連中。その連中に呼び出された二足の同朋に出会った瞬間、更に心が高揚したのだ。なんと同朋達は吾輩と同じ「井」模様であり、色違いの同郷と見受けられたのだ。すぐさま会話を始めた。沢山会話をした。主たちが「丼」と呼ばれるものを食す間も嬉しくて会話をし続けた。そこで分かったことは、どうやら同朋達もそれぞれ、四十kmやら七十kmという事前作業に駆り出されていたようである。
兄弟とも呼べる仲間と出会い、最高潮に達した興奮の中、いよいよ連続作業とやらの始まりを迎えた。残念なことに主は、同乗してきた人間達と別れ、孤独なスタートを選択した。そのため、吾輩も同じく孤独な始まりとなった。しかし、出会う多くの同志たちが、すり減らした体を自慢げに披露し、その話を聞かせてくれた。ただのんびりと会話をしている時間は皆無であり、いつしか主同様、吾輩も寡黙になっていた。そして「雨」。吾輩の一番苦手な環境である。主と出かけた週末の山と比べると、同じかむしろ緩やかな道中であり、すれ違う同朋達の辛そうな声とは真逆の気分で、吾輩は過ごせていたのだが、いやはや「雨」だけは。後は、主が雨溜に落ちないように祈るばかりであった。
道中一番高い場所に二時三十分前には到着できたようで、その結果を主は満足しているようであった。相変わらず「雨」の気持ち悪さはあるものの、吾輩も気分良くここまでを過ごしていた。そして下り。訓練の山でも、素早い作業を避けていたように思えた下り坂を、吾輩の意とは反し、主はここから素早さを増したのである。吾輩これには驚くも、どうやら主は残りの体力を考え「大丈夫」と判断したようである。少々呆れるも、吾輩。付き合わないわけにもいかず、夜の霧という、何か不安を増すような風景に溶け込んでいったのである。
「バシャ」。そんな悲惨な音、肌触り、匂い。そんなものに遭遇するのに時間はかからなかった。案の定、主は雨溜にはまり、色白の吾輩を黒く汚してしまったのである。正直、吾輩は立腹し、ここで主人を別れようとすら思ったのだが。主も悪いと思ったのか、しきりに吾輩を気にしている様子であり、大きな汚れをふき取ってもくれ、吾輩の怒りも下りに向かっていった。そんな折、吾輩の流れが少し狂ったように感じたのである。左の流れが少しおかしい。恐る恐る主を見るのだが、気づかぬ振りなのか、涼しげに一歩を進める作業をしている様子。吾輩、少し心配するも、鶏と言う生き物の声で「心配」が吹っ飛んでしまった四時三十分の出来事であった。
そこから、主の仲間と思しき方に、吾輩とも一緒に過ごした「服」と呼ばれる連中が数人回収される姿を見たのが五時三十分。主としては、概ね予定通りに進んでいる連続作業に安堵しているようで、吾輩も不思議と似たような感覚を覚えた。黒く汚れた肌と、少々擦り減った体こそ不愉快ではあるものの、主人の疲れを考えると、もう文句も言えないとすら考えていた。その後も相変わらずの速度で淡々と進む吾輩達。そんな折、主が鞄をあさり始めたのである。あまり気にしていたかった吾輩であるが、そう言えば主。人間が取る「食事」なるものを取っていなかった様子。後日談になるが、食事制限を解放した主。嬉しくて連続作業当日に、チョコレートなる甘菓子を三人前程度食した様子。それが原因で、この道中、水分以外あまり口にできなかったとのこと。そんな主が「食」を求めだしたのだから、いよいよ力切れなのか、それとも加速するのか。そんな思考の瞬間である。
後方よりの「やっと追い付きました」の声。主も吾輩も、事態の飲み込みに、ひょっとして数十分、いや数時間。いや何日要したのかも分からないまま、声の方に顔をやると、そこには主の後輩。吾輩の同朋の姿があったのである。
主と吾輩。それなりにこの連続作業に対し、訓練を重ね、かつここまで順調に時間を重ねてきたはず。連続作業開始前、数多くの同志達を見るも、その足音の多くは主の背中から聞こえ、少なくともここまで、主と吾輩は何も間違えず歩んできたはずなのに何故、主の後輩と吾輩の同朋がここに居るのか。
七十kmを訓練したという、連続作業初参加の主の後輩。常々主は、「平地の七十km訓練では、上りの疲れが分からない。そこに気温差も加わるのだから、並大抵の訓練では、連続作業を十二~十三時間程度で終えることは不可能」そう言いきっていたし、吾輩も厳しい上りの訓練を経て、大いに賛成をしたものである。それにも関わらず、主の後輩は「やっと追い付いた」との台詞を吐いてきたのである。何が何だか分からなくなった六時。主の力が吾輩を通じて地面に吸収されていく様を、なんの抵抗もせず、感じているだけの吾輩であった。その後、主も吾輩も、軽快な後輩と同朋の背中を見つつ、主は食べかけの食事を止め、吾輩同様、白くなった頭の整理を始めたように記憶している。ただ、ただ、後輩と同朋の後ろ姿を見送りつつ。
主と吾輩が我に返るまで、何時間経ったのか。いや数秒だったのか。情けなくもあるが吾輩の記憶にはない。どうやら主も同じようで、連続作業が終わった後も思いだせないでいるらしい。この様は、情けなくもあるのだが、吾輩が主を好きだと思える部分でもある。どうやら主と吾輩は同じ心の持ち主らしい。そんな主が我に返り、訓練開始時に立てた目標。「十二時間三十分以内で連続作業を終えること」が、白い靄から、はっきりと顔を出したことは幸いであり、主も吾輩も、それに向かって歩み始めたのである。
流れの異変は、果てしなく遠く、そしてまっすぐに延びる道で深刻なものとなった。当初左としていた悪い流れが、右に深刻さをもたらしたようで、主は左の吾輩と、自身の右手を使い、なるべく右の吾輩を使わないように歩きだしたのである。吾輩もなんとか主に協力したかったのであるが、正直誰かを応援するほど、力がなかったのも事実である。二人とも主が立てた目標だけが、動力となったのである。
十二時間二十八分。連続作業終了は、主の目標より約一分早く、その時を終えたのである。この一年。吾輩と主との付き合いは二ヶ月ほどであったが、そんな吾輩でも「涙」とやらが溢れそうになるのに、主はこのために一年時間を費やしてきたのだ。さぞ嬉しかったことであろう。そして、先着していた後輩を労う主に習い、吾輩も同朋を労い、少し湿った芝生の上に寝転がった。冷たくも心地よい時間であった。
後日、靴長屋に戻った吾輩は、同志に主の活躍と、目標を持つことの大切さを説くと共に、黒皮達にもこの連続作業を語ってみせた。依然、身を削ってまで、苦行をすることに否定的な面々もいるのだが、主は苦と喜を知っている。そして吾輩も苦と喜を知ってしまったのだ。
来年は、吾輩が選ばれるのか、また新入りがやってくるのか。それは主の気分しだいである。ただ、まだ若い吾輩は、少なくともこの一年。主と訓練を共にできるようだ。「苦」しかないように映る訓練と連続作業。こんな奇妙な世界に「喜」を見出す主を、少し尊敬すると共に、その片棒を担げる吾輩を、幸せに感じる今日この頃である。
その感想文を所属させていただいている「会」に提出します!
そしてそれが文集となって返ってきます。
万が一!?
いや億が一暇な方がおられましたら…
今回管理人が提出した感想文を貼っておきます。
今回の批評は、「くどい」だったので(涙)
そのままだとは思いますが…(笑)
『 吾輩は靴である 』
吾輩は靴である。名前はまだない。
どこで生まれたのかとんと見当がつかぬ。
何でも薄暗い箱に閉じ込められていたことだけは記憶している。その後明りを手に入れた。その時、吾輩はここで初めて人間というものを見た。後で聞くと、年の頃は四十数歳のおじさんのようだ。
間もなくして、薄暗い箱から出た吾輩にも同志ができた。そもそも、形の異なるもの、また皮膚の張りの違うものまで様々で、特に黒光りした奴などは、無愛想にいつも吾輩を睨みつけていた。そんな中、吾輩と同じ背格好の何人かと話すようになった。特に派手な桃色にペンっとはねたような印(以後桃色)と、黄色に三本の筋が入った(以後黄色)二足とは、形も似ているせいか、打ち解けるのに時間はかからなかった。ちなみに吾輩は、井戸の「井」のような模様のある白斑である。
そこで聞いた、黄色の話が特に印象深かった。どうやら吾輩たちは人間が走ったり、歩いたりするために作られた道具のようで、打ち解けた輩は、どうやら全てそれのようだ。そして、黄色と桃色は過去に一日の半分以上、連続でその作業をさせられた経験があるようだった。しかも黄色の体はボロボロで見てはいられない状態だった。ただ「俺より酷い姿の輩も居たなぁ~」「猫のような絵が描いていたので、猫って呼んでいた爺さんだったが、そいつは二度歩かされたようで、ボロ雑巾のようになってしまっていたなぁ」「いまじゃ~帰らぬ人よ」どうやらその猫なる輩は、始終歩かされた上に、連続作業を二度も経験したそうだ。ただ黄色はこうも言った。「ただ猫は満足そうだったよ」「何かあれば過酷な連続作業を自慢していたし」「そんな俺も体こそボロボロだが、連続作業は唯一無二の自慢話だよ」続けて桃色も「それを言うなら、俺だって昨年の連続作業を自慢させてくれよ」「昨年は、黄色より早い十二時間五十五分だったんだぜ」「いやいや、雪降る中を歩きに歩いた俺の方が凄いぞ」二人の自慢は止まらない。どうやら、連続作業と言う行為は、そうとう誇り高きものらしい。そう感覚的には分かるのだが、体をボロボロにしてまで付き合うことは、吾輩には到底理解できそうもない。
何度か、見晴らしの良い山の頂に連れて行かれた。どうやら、連れていく相手は、主の気分しだいのようで、特に雨の日は黄色が多かった気がする。そこでも幾多の同志に出会うのだが、どうやら我が主はこの山道では有名人なようで、幾度となくすれ違う人に「何往復目ですか?」と質問をされ、その度に主は今の正確な数字を答えていた。そして「えぇっ」と驚かれることを楽しんでいるようだ。内心吾輩も気分が良く、出会う同志につい自慢をしたこともあった。それがまた、体はすり減るのに悪い気がしない。不思議な気分だった。
そんなこんなで、連続作業の当日を迎えた。靴長屋からは吾輩が呼び出され、桃色は少し残念そうな顔で、黄色は「無茶するなよ」って笑顔で送り出してくれた。吾輩は同志に会釈をすると同時に、出番の少ない黒革達を、少し誇らしく見下げていたのは、紛れもない事実だった。
準備を始めた主に呼び出され、外気を吸う吾輩。初めて見る山々の景色に心の高揚を感じずにはいられなかった。そして主と同乗してきた二人の後輩と思しき連中。その連中に呼び出された二足の同朋に出会った瞬間、更に心が高揚したのだ。なんと同朋達は吾輩と同じ「井」模様であり、色違いの同郷と見受けられたのだ。すぐさま会話を始めた。沢山会話をした。主たちが「丼」と呼ばれるものを食す間も嬉しくて会話をし続けた。そこで分かったことは、どうやら同朋達もそれぞれ、四十kmやら七十kmという事前作業に駆り出されていたようである。
兄弟とも呼べる仲間と出会い、最高潮に達した興奮の中、いよいよ連続作業とやらの始まりを迎えた。残念なことに主は、同乗してきた人間達と別れ、孤独なスタートを選択した。そのため、吾輩も同じく孤独な始まりとなった。しかし、出会う多くの同志たちが、すり減らした体を自慢げに披露し、その話を聞かせてくれた。ただのんびりと会話をしている時間は皆無であり、いつしか主同様、吾輩も寡黙になっていた。そして「雨」。吾輩の一番苦手な環境である。主と出かけた週末の山と比べると、同じかむしろ緩やかな道中であり、すれ違う同朋達の辛そうな声とは真逆の気分で、吾輩は過ごせていたのだが、いやはや「雨」だけは。後は、主が雨溜に落ちないように祈るばかりであった。
道中一番高い場所に二時三十分前には到着できたようで、その結果を主は満足しているようであった。相変わらず「雨」の気持ち悪さはあるものの、吾輩も気分良くここまでを過ごしていた。そして下り。訓練の山でも、素早い作業を避けていたように思えた下り坂を、吾輩の意とは反し、主はここから素早さを増したのである。吾輩これには驚くも、どうやら主は残りの体力を考え「大丈夫」と判断したようである。少々呆れるも、吾輩。付き合わないわけにもいかず、夜の霧という、何か不安を増すような風景に溶け込んでいったのである。
「バシャ」。そんな悲惨な音、肌触り、匂い。そんなものに遭遇するのに時間はかからなかった。案の定、主は雨溜にはまり、色白の吾輩を黒く汚してしまったのである。正直、吾輩は立腹し、ここで主人を別れようとすら思ったのだが。主も悪いと思ったのか、しきりに吾輩を気にしている様子であり、大きな汚れをふき取ってもくれ、吾輩の怒りも下りに向かっていった。そんな折、吾輩の流れが少し狂ったように感じたのである。左の流れが少しおかしい。恐る恐る主を見るのだが、気づかぬ振りなのか、涼しげに一歩を進める作業をしている様子。吾輩、少し心配するも、鶏と言う生き物の声で「心配」が吹っ飛んでしまった四時三十分の出来事であった。
そこから、主の仲間と思しき方に、吾輩とも一緒に過ごした「服」と呼ばれる連中が数人回収される姿を見たのが五時三十分。主としては、概ね予定通りに進んでいる連続作業に安堵しているようで、吾輩も不思議と似たような感覚を覚えた。黒く汚れた肌と、少々擦り減った体こそ不愉快ではあるものの、主人の疲れを考えると、もう文句も言えないとすら考えていた。その後も相変わらずの速度で淡々と進む吾輩達。そんな折、主が鞄をあさり始めたのである。あまり気にしていたかった吾輩であるが、そう言えば主。人間が取る「食事」なるものを取っていなかった様子。後日談になるが、食事制限を解放した主。嬉しくて連続作業当日に、チョコレートなる甘菓子を三人前程度食した様子。それが原因で、この道中、水分以外あまり口にできなかったとのこと。そんな主が「食」を求めだしたのだから、いよいよ力切れなのか、それとも加速するのか。そんな思考の瞬間である。
後方よりの「やっと追い付きました」の声。主も吾輩も、事態の飲み込みに、ひょっとして数十分、いや数時間。いや何日要したのかも分からないまま、声の方に顔をやると、そこには主の後輩。吾輩の同朋の姿があったのである。
主と吾輩。それなりにこの連続作業に対し、訓練を重ね、かつここまで順調に時間を重ねてきたはず。連続作業開始前、数多くの同志達を見るも、その足音の多くは主の背中から聞こえ、少なくともここまで、主と吾輩は何も間違えず歩んできたはずなのに何故、主の後輩と吾輩の同朋がここに居るのか。
七十kmを訓練したという、連続作業初参加の主の後輩。常々主は、「平地の七十km訓練では、上りの疲れが分からない。そこに気温差も加わるのだから、並大抵の訓練では、連続作業を十二~十三時間程度で終えることは不可能」そう言いきっていたし、吾輩も厳しい上りの訓練を経て、大いに賛成をしたものである。それにも関わらず、主の後輩は「やっと追い付いた」との台詞を吐いてきたのである。何が何だか分からなくなった六時。主の力が吾輩を通じて地面に吸収されていく様を、なんの抵抗もせず、感じているだけの吾輩であった。その後、主も吾輩も、軽快な後輩と同朋の背中を見つつ、主は食べかけの食事を止め、吾輩同様、白くなった頭の整理を始めたように記憶している。ただ、ただ、後輩と同朋の後ろ姿を見送りつつ。
主と吾輩が我に返るまで、何時間経ったのか。いや数秒だったのか。情けなくもあるが吾輩の記憶にはない。どうやら主も同じようで、連続作業が終わった後も思いだせないでいるらしい。この様は、情けなくもあるのだが、吾輩が主を好きだと思える部分でもある。どうやら主と吾輩は同じ心の持ち主らしい。そんな主が我に返り、訓練開始時に立てた目標。「十二時間三十分以内で連続作業を終えること」が、白い靄から、はっきりと顔を出したことは幸いであり、主も吾輩も、それに向かって歩み始めたのである。
流れの異変は、果てしなく遠く、そしてまっすぐに延びる道で深刻なものとなった。当初左としていた悪い流れが、右に深刻さをもたらしたようで、主は左の吾輩と、自身の右手を使い、なるべく右の吾輩を使わないように歩きだしたのである。吾輩もなんとか主に協力したかったのであるが、正直誰かを応援するほど、力がなかったのも事実である。二人とも主が立てた目標だけが、動力となったのである。
十二時間二十八分。連続作業終了は、主の目標より約一分早く、その時を終えたのである。この一年。吾輩と主との付き合いは二ヶ月ほどであったが、そんな吾輩でも「涙」とやらが溢れそうになるのに、主はこのために一年時間を費やしてきたのだ。さぞ嬉しかったことであろう。そして、先着していた後輩を労う主に習い、吾輩も同朋を労い、少し湿った芝生の上に寝転がった。冷たくも心地よい時間であった。
後日、靴長屋に戻った吾輩は、同志に主の活躍と、目標を持つことの大切さを説くと共に、黒皮達にもこの連続作業を語ってみせた。依然、身を削ってまで、苦行をすることに否定的な面々もいるのだが、主は苦と喜を知っている。そして吾輩も苦と喜を知ってしまったのだ。
来年は、吾輩が選ばれるのか、また新入りがやってくるのか。それは主の気分しだいである。ただ、まだ若い吾輩は、少なくともこの一年。主と訓練を共にできるようだ。「苦」しかないように映る訓練と連続作業。こんな奇妙な世界に「喜」を見出す主を、少し尊敬すると共に、その片棒を担げる吾輩を、幸せに感じる今日この頃である。
PR
この記事にコメントする
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
フリーエリア
最新コメント
[07/07 スーパーコピー 財布 クロエ]
[06/25 スーパーコピー 韓国 税関]
[12/29 渋滞]
[06/01 同じくおっさん]
[03/20 次期社長]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
管理人の大輔
性別:
男性
職業:
営業さん
趣味:
BASS釣り
自己紹介:
某お漬物屋さんの…
営業兼企画屋さんが管理人の正体です(笑)
営業兼企画屋さんが管理人の正体です(笑)
ブログ内検索
P R
カウンター